東京高等裁判所 昭和56年(ネ)2286号 判決
訴外報電は、訴外篠芳昭が昭和五一年三月ごろから経営を引受け、自ら代表取締役となって広告代理業を営んでいた株式会社であるが、実体は同訴外人の個人事業会社ともいうべき会社であったこと、訴外篠は昭和五二年一〇月ごろ広告代理業務を縮少し、当時米国で売れ始めていたワゴンの輸入販売を手がけることを企図したが、資金がなく、その調達に難渋していたところ、たまたま同年夏ごろ知合い、その後右訴外会社を度々訪れていた控訴人が、当時訴外リッカー株式会社に勤務していたものの将来事業経営の希望を有していたこともあって、右ワゴンの輸入販売に関心を抱き同事業に参画することを申し出で、訴外報電の取締役に就任するとともに右資金を他から借入れるについて控訴人所有のマンションを担保として提供することを承諾したこと、訴外篠芳昭としては当初右マンションを担保として金六〇〇万円を借受ける予定であったが、当時右マンションには控訴人の残債務金一九一万円余のために抵当権が附されており、これを担保として訴外銀行から金員を借受けるためには右残債務を弁済して抵当権を抹消しなければならず、かつ当時控訴人が転居に伴なって金一五〇万円の金員を入用としたところから、結局金一三〇〇万円を訴外銀行から借受けることとし、前記のように借受けたものであること、一方被控訴人細木久慶は、東京都中小企業育成政治連盟の代表者で政治活動に従事しており、訴外篠芳昭とは住居が近く、同訴外人が同被控訴人の後援会員でもあるところから今回の融資先の紹介を依頼されて訴外銀行を紹介し、このような経緯があるため本件借受けについて連帯保証人となったこと、また、被控訴人高木博は、訴外篠芳昭と住居が近く、昭和五一年ころ右訴外人から共同で事業を営むことを誘われたが、同被控訴人が財団法人鉄道弘済会に勤務していたところから共同で事業を営むことはできないが同訴外人の事業に協力する趣旨で、昭和五二年三月ころ訴外会社の取締役に就任し、その後担保物件を提供したり保証人になるなどして訴外報電の資金繰りを援助してきたが、訴外報電の業務に直接携わったことも報酬の支払を受けたこともなく、これまでに交際費名目で金七万円を一回受領しただけで、右のような経緯から本件借受けについても連帯保証人となったことが、それぞれ認められる。<中略>前示当事者間に争いのない事実に右各認定事実を併せると、本件借受けについては形式上訴外報電が主債務者、訴外篠芳昭、控訴人及び被控訴人らが連帯保証人となっているが、その内部の実質的な法律関係においては訴外篠芳昭と控訴人が主債務者(その相互の関係は連帯債務者のそれと同一とみるべきである。)で、被控訴人両名が連帯保証人であったと認めるのが相当である。
そうだとするならば、控訴人が訴外銀行に対してした弁済は、その実質においては主債務者の一人としてしたものにほかならないから、控訴人は訴外篠芳昭に対してのみその負担部分の割合に応じて求償請求をなし得るに止まり、被控訴人らに対しては求償をなし得ないものというべきである。
(川上 吉野 小川)